そうこのすみっこ

乃木坂46 桜井玲香さんを応援しています。

嫌われ松子の一生 赤い熱情篇 -後半-

嫌われ松子の一生 ~赤い熱情篇~については舞台で一度、DVDで二度鑑賞しました。

 

一度目(千秋楽公演)はただただ、桜井玲香さんの演技に感動し涙しました。

二度目(DVD)では、桜井玲香さん自身の当時の状況を思い起こしてはその努力に涙しました。

三度目(DVD)はとても強い吐き気を感じました。(笑)

 

それはなぜでしょうか。

原因は桜井玲香さん演じる松子の無垢でまっすぐな美しい愛情と、岡田達也さん演じる岡野への憎しみと自己投影だと捉えています。

 

それは序盤で八女川が投げかける「綺麗と美しい」の違いが関わってきます。

岡野が「綺麗は身近なものであり、美しいは近寄り難いもの」と解釈したことに対し、八女川は「美しいは汚いも醜いも含めて美しい」と解釈し、更には「僕には綺麗なものこそ近寄り難い」と述べています。

そして終盤で岡野は龍にこう言います。

「(松子のように)あんな燃やし尽くすような生き方はできない!あんなに全力で愚かで惨めな、自分が傷つかない計算もしないで生きられるわけがないじゃないか!」

 

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私の解釈ですが、結論として松子は美しい人物だったと捉えています。

八女川が愛し、岡野がどうしても手に入れたかったものは本当に美しかったのだと思います。

 

ではどう美しかったのでしょうか?

八女川には家族のつながりを捨てたとしても全力の愛情を注ぎ、

妻子がいながらも交際をする岡野からの愛情が全て自分に注がれていると愚直に信じてそして裏切られ、

赤木に「欲しいものは私を裏切らないもの」という揺るがない決意の目を向け仕事に誇りを持ち、

小野寺の裏切りと心ない言葉に対して刃物を持って立ち向かい、

一度は島津と愛を誓うものの「私のことは忘れて」と過去の罪を全うした代償に掴みかけた幸福を失い、

自身の人生を狂わせた龍を愛し出所を待ち続けるも「二度と近づくな」との言葉を残し立ち去られます。

 

いかがでしょう?

「あんなに全力で愚かで惨めな、自分が傷つかない計算もしないで生きられるわけがないじゃないか!」

という台詞に私は共感を感じざるを得ません。

私だったらこうなる前に逃げ出しているに違いないです。

 

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ここでまた主観ですが、私からすると松子の人生を大きく変えたのは岡野であり、大げさに言えば岡野に対し憎しみすら感じました。

 

龍によって先生という職を奪われるも、少なくともその後の八女川との生活は幸せだった気がします。

確かに八女川との交際中に家族のつながりを失い、風俗嬢という仕事に手を出します。

しかしながら前者は松子の意思であり八女川は強制していません。

後者は赤木によって不採用となり、更には素人を売りにする店には行くなとの助言も受けます。

八女川の自殺後、岡野は善人を装い自身の浅はかな承認欲求を満たすために松子を弄び、侮辱し、裏切り、その罪を愛ではなく金で償おうとしました。

ここで松子は夢を無くし、自身の愛情に対する裏切りという絶望に直面します。

それから松子は「私を裏切らないもの」をお金と認識し、赤木ではなく小野寺を選び罪を犯します。

島津についてはタイミングというか運命というかもうどうしようもない気がします。(笑)

いっちばん幸せそうなキラキラした松子なんですよね。

笑顔が素敵で一番好きなシーンです(笑)

龍はあまりにまっすぐな愛情が怖くなって逃げ出しますが、龍が起こした罪の数々を思えば「なんでここにいるんだよ」という感情は当然といえば当然でしょうか。。

そもそもここまででいくつもの絶望を感じてきた松子が龍にすがるのも無理はなく、そうさせてしまった元凶は岡野ではないのかと感じるのです。

 

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頭の中で上記のような整理を行い、腹に落ちた瞬間に強い吐き気を覚えました。

 

「あんなに全力で愚かで惨めな、自分が傷つかない計算もしないで生きられるわけがないじゃないか!」

 

そうです。

私が共感したこの台詞は、最も憎んだ岡野から発せられた言葉だったのでした。

損得勘定で生きた結果、誰にも愛されなかった人間。

自己犠牲の結果、愛と引き換えに人知れず命を落としていった人間。

 

この作品が伝えたかったことはいったいなんなのでしょうか?

 

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全体を俯瞰で捉えると、松子は実際に何度か幸せを掴みかけたものの、逃しています。

それは赤木の片想いや、島津との別れ、龍との決別がわかりやすいでしょうか。

 

それに共通して言えることは「すれ違い」なのではないかと感じます。

たぶんどの人物ともハッピーエンドになれるポイントがあったように思えるのですが、どれもお互いの本心を理解できていなかったり秘密を共有できていなかった気がします。

完全に結果論でなおかつかなり強引ですが、そこさえなんとかなっていればもうちょっと前向きな人生になっていたのかなぁなんて思うのです。

 

当たり前ですが観る方によって持つ感想は様々であり正解はありません。

だからこそ色んな方に感想を伺ってお互いの本心に触れられるいい機会を与えてもらった気がします。

 

松子は誰に嫌われたのか?

 

それも含めて握手会で桜井玲香さんに聞いてみようかなと思います。